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今日あるを予想できなかった野田政権

9月20日(木) 
 中国各地の反日デモが潮を引くように静かになった。代わって明確になったのは中国の党、政府要人らの相次ぐ日本に対する強硬発言である。米国のパネット国防長官と会ったポスト胡錦濤主席の習近平国家副主席は、日本政府の尖閣国有化決定を「茶番」と一刀両断、米国に対しても問題への介入をしないよう釘を刺した。
 胡主席は公式の場で尖閣問題について発言していないが、次期指導者の習副主席の発言が今後の日中関係に及ぼす影響は大きい。既に習体制がスタートしたと見ていいだろう。

 野田首相は、19日の民放テレビで中国各地の激しい反日デモについて「想定を越えている」と語ったが、指導者交代期の微妙な時期に特段の事前折衝もないままの「国有化宣言」がどんな反応をもたらすか。そのことを指導者として当然認識すべきだった。
 しかも、この時期は満州事変の引き金となった柳条湖事件(1931年9月18日)を目前とした、極めて注意を要することに気付いていなかったのだろうか。
 加えて、首相は先のロシア・ウラジオストクでのAPEC首脳会議で、「立ち話」ながら胡錦濤主席と言葉を交わしている。この場で主席は自ら国有化に反対だと言い、首相は受ける形で「現状維持」を答えたという。
 日本の国有化宣言はその2日後である。尖閣諸島が歴史的にも日本領土であることは明白だが、「半歩も譲らない」(温家宝首相)中国に日本の考えを十分話さないで、しかも主席から念押しされた直後の国有化宣言のタイミングの悪さは弁解の余地はない。

 首相は問題沈静化のため様々なルートで中国側と働きかけていると語っているが、野田政権にそのような「芸当」ができる人物はいない。黒衣役など及びもつかない。率直に言って、外交ルートでごく当たり前の連絡をしているに過ぎない。
 中国が一歩も譲らない強硬姿勢を取るのは、前述のように中国の指導者の交代期であることに加えて、日本側の態勢がぐらついている弱みを知っているからだ。政治的には野田政権の足元は弱体化して、総選挙となれば政権交代は間違いないと中国側は見ている。さらに経済的にも日本の現状はかつてないデフレに悩まされ、不況からの脱出の見通しもない。
 政治的にも経済的にも弱みのある日本が、多少経済成長に陰りがあるとはいえGDP世界第2位となった中国の勢いに押されっぱなしなのは明らかだ。

 野田政権はそうした状況を知りながら、尖閣の国有化に踏み切った。東京都の石原知事の「尖閣買い取り」の攻勢に追い込まれて国有化宣言に踏み切った拙速は、内政と外交の基本を忘れた軽挙と言わざるをえない。

外相が直接対中折衝に乗り出せ

9月17日(日) 
 中国各地の反日デモが一段とエスカレートしている。中国の治安当局は武装警官を大量動員して日本大使館など公館の警備を強化しているが、デモは一部で暴徒化し日系資本の企業やデパート、飲食店などに押し寄せ破壊、略奪を続けている。路上では日本車が暴徒によって転覆、破壊、放火される始末。
 日本政府の尖閣諸島国有化決定で燃え上がった反日デモは、収まりそうもない。警備当局は暴徒化した群衆に催涙弾を発射するなどしたが、これが群衆をさらに興奮させているようだ。
 こうした状況に日本政府は危機感を強め、中国政府に在留邦人の保護、日系企業に対する破壊行動をやめさせるよう要求しているが、現状では反日行動が沈静化する見通しはほとんど立っていないようだ。

 事態がここまで悪化すると、野田政権はこの現実にどう立ち向かおうとしているのか気になって仕方がない。
 首相は「毅然とした対応と、大局観を失わない冷静な対応」というが、15日の首相は公邸にこもりっきりで目前に迫った民主党代表選で地方代議員らに協力電話を掛けまくっていたというから唖然とするしかない。オーストラリアでの日豪防衛協力を話し合った玄葉外相は急きょ日程を切り上げて帰国したが、中国政府に新たな具体的な対応を求めた風はない。国民の不安に、黙して語ろうとしない野田政権の統治能力に呆れる。
 駐中国大使館は就任したばかりの西宮大使が急逝した。代わりの新任大使は赴任していないから、北京での対中折衝はない。新任大使が中国要人と直に会えるほど現実は生やさしくない。野田政権が問題の緊急性を認識しているなら、玄葉外相が直接北京に乗り込んで中国側に邦人保護と日本企業に対する過激な行動をやめるよう強談判するぐらいの政治力と胆力が必要だ。外務省の事務レベルで中国側に「注意」を喚起しても埓はあかない。

 激しさを増す反日デモの引き金となったのは確かに日本政府の「尖閣国有化」だが、同時に中国国内で近年問題となっている「格差社会」の拡大に対する住民の政府に対する不平・不満が大きく膨らんでいる事実も忘れてはならない。
 中国は指導者交代の時期を迎えている。この微妙な時期に国民の不満を力で押さえ込むようだと、逆に共産党政権に対する反発となる可能性は高い。中国政府は国内の政治的、社会的状況から反日デモに対する強力な抑止行動を取りにくいことも挙げられる。

 民主党も自民党も代表選、総裁選で頭がいっぱいで、各候補者が語る領土問題対応も通り一遍の域にとどまっている。緊迫化する状況に過敏な反応は控えなければならないが、政権、とりわけ首相はあらためて日本の主張を内外に発信すべきだが、どういうわけか、その素振りも見えない。
 ここにも野田政権の〝ちぐはぐさ〟が表れている。
 政局と内政の諸問題で頭がいっぱいの野田政権の統治能力の限界が、いやでも見えてくる。
プロフィール

gatayann

Author:gatayann
尾形宣夫。
ジャーナリスト。世の中の様々な出来事を簡潔な言葉でまとめた日記です。タイトルは肩ひじ張らずに「ありのまま記」としました。

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本Webは私の2本のブログに続くものです。HPはhttp://bit.ly/hxZoUw、オフィシャルサイトはhttp://futenma.dtiblog.comです。あわせてお目通しをお願いします。

☆「運命の島 オキナワ」=副題「幸せは珊瑚礁の彼方に」(文芸社)
http://www.amazon.co.jp/%E5%B0%BE%E5%BD%A2-%E5%AE%A3%E5%A4%AB/e/B009PAT28C

1942年宮城県生まれ。
1967年中央大学法学部卒業。
共同通信編集委員室編集長・論説委員、編集委員室次長・論説委員を経て2002年11月定年退社。元共同通信社客員論説委員。
日本自治学会理事。政策情報誌元編集長。分権型政策制度研究センター(RCD)委員。
分権ジャーナリスト会(東京)。神奈川県鎌倉市在住。





(2011年8月10日~)


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